湯河原・真鶴の野生生物を観察し、写真に記録すること。
「白銀林道/野生生物探検記」12

●リスの住む森

15、マツ枯れが進行しリスの姿が少なくなる

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 リス観察を始めて4、5年目ぐらいから白銀林道周辺のマツが急速に枯れてきた。それ以前からもマツがポツポツ枯れているのは分かってたが、リスの巣が掛けられたよく見知ったマツが何本も枯れるからその感が強くなってくる。
 そして、あらためてマツ林を見直してみると、マツ枯れは恐ろしいほど進行していて、一部のエリアで全滅のようなところもあった。マツ枯れは枝先のほんの少しのマツ葉が茶色に変色したのが見えたらそれから1年もかからず全部のマツ葉が褐色になり枯死してしまうのだ。
 その原因はマツノザイセンチュウという線虫が樹体内部の管類を閉塞させ、水を吸い上げることができなくするため。マツノザイセンチュウは自らは移動できずマツノマダラカミキリによって媒介されるが、これを防ぐことは莫大な労力と費用がかかるため行政も手出しができないままただ眺めているだけなのかもしれない。
 白銀林道周辺のマツ林は2007年ぐらいから数年の間、著しくマツ枯れが進行し、始め10パーセントぐらいだったのが2、3年後90パーセントまで枯れてしまった林もいくつかできた。こんなマツ林にも以前ならエビフライがたくさん見られたのに、リスは巣も掛けられずエサもないから当然のごとく姿が見られなくなってしまったのだ。
 小鉄の桑の木の橋の縄張りにあったマツの橋もその隣のマツも枯れ、その枝で毛づくろいしたり逢いびきする姿はもう写真の中だけの記憶になってしまったのだ。マツの橋から東へ100メートルあたりにあった数個の巣のマツも枯れたし、オオタカが現れたり、クマシデのある遊歩道のリスの巣のマツも枯れてしまった。
 死んだ子の年を数えるようで虚しいのだが、マツ枯れは当然ながらリスの生活環境を極端に歪めてしまいその数を大きく減らした。マツはあってもエビフライが見られなかったり、新しい巣を発見することがほとんど無くなってしまったのだ。
 マツ枯れした林が数年経てばもともとマツが無かったかのように見える。丹沢周辺の山にはマツが少ないが、白銀林道よりずっと前にマツ枯れがあったのだろうと思う。その丹沢にはオニグルミの木がたくさんあり、多くのリスが生息している。その巣を掛ける木はマツが無いからか朴木や杉だったりクルミだったりとまちまちで冬場葉が落ちて巣が丸見えなのもあるから驚かされる。
 なので、白銀林道でもリスの巣木が変化している可能性も考えられる。林道の西端でモミの木に掛けられた巣を一つだけ発見してるから、人や猛禽などの視線圧のある林縁にマツが無ければその代りを探すはず。マツ枯れは止まりはしないが、いっときの勢いはなくなり、徐々に減ってきているようにも見える。
 リスに出合う機会はだいぶ少なくなったが、新しく巣材を採った杉の木を何本も見ているし、枯れたとはいえエサの松ぼっくりのなるマツはまだたくさんあるし、とりあえずは細々とでも生き繋いでいくだろうと考えている。
 
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我が家の庭が大変なことに

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上の写真は庭から海側方向を見たところで下が山側を見たもの。広角で撮影したが全部を写すのは無理だった。
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ジブロックにカットして袋詰めしたコンブ。左の細いのは26〜28本入り。真ん中は中サイズで24枚前後。右の幅広のは18枚前後。

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まな板の左右が45cmだからアマダイは約50cmで、重さ1,5キロの特大。さっそく干し上がったコンブでコブ締めを。


昨年12月の終わり頃養殖棚へ移植したコンブがもう大きく育ち、ここまで3度収穫した。昨年はこれを港と自宅の庭に分けて干したが、今年は庭のみで干すことに。ま、庭だと行ったり来たりしなくて済むし、乾きすぎて折れたり、風で飛ばされたりとかがなくて管理しやすいのがいい。

しかし、一度に130本とか150本とか採ったらこんな大変な状態になってしまったのだ。それでも天気が良ければ3、4時間で乾くし、ワカメよりはやりやすい。乾いたコンブは70リットルのゴミ袋に折り畳んで入れ、湿気らないようにして、広げた新聞紙に小出しにしてハサミでカットし、ジブロックに大中小と分けて入れる。

最初は北海道産に較べれば薄くて柔らかいコンブで、何もワザワザこんな暖かい相模湾で小さなのを作らなくとも、と思っていたけど、食べたり出汁をとったり、コブ締めを作ったりしてコロっと考えが変わった。まず、千切って食べれば柔らかでコンブの旨味が口に広がり、ネバネバがすぐ出て甘みが増す。また、細いのを芋焼酎のお湯割りに入れて飲むと出汁が効いてとても旨く、これも癖になる。これを駅前の店に持ち込んでやっていたら、真似てつまみにする人、焼酎に入れる人が出てくる。

また、鰹節を削り出汁を取るようになってからコンブが必需品となり、昨年から今年にかけては昨年製品にしなかった、というか余ったのを贅沢に使ったのだ。薄くて出汁が出るのだろうかと疑問だったが逆に濃い出汁が出て驚かされたほど。これはコブ締めを作り、半日締めたらネバが出てくるので分かるが、2日も置いたらネバが糸を引いて拭きとらなければならないぐらいになるのだ。それと、生コンブをメカブのように叩くと、メカブ同様ドロドロになり、白いご飯に削り節とかけて食べるともう最高。このことはまだ私だけしか知らないので、今後どう広めていこうかと考えているところ。

製品にしたコンブは一袋40g程度で左の細いのが26〜28本入りで、真ん中の中サイズが24枚ほど。右の幅広のが18枚前後で、これはコブ締め用として売ろうかと思っている。真ん中は小さな魚のコブ締めや出汁用、左は出汁およびおしゃぶりコンブ、かな。大きなアマダイが釣れたので4分の1をさっそく新しいコンブでコブ締めにしてみたら最高の味に仕上がった。このアマダイ、まな板の左右が45センチだから長さ約50センチで、重さが1,5キロもあり、脂がよく乗っていた。頭を梨割りにし、干物にして焼いたら、脂がタラタラ落ちて、火が付いた。仲間から漁師なら売れよと言われたけど、売るのはコンブがあるし、滅多に釣れないこの大物は食べることにした。荒の味噌汁も旨かったし、あとはカマや身を西京漬にしていて、今夜あたりから食べごろか。ま、自給自足の究極の味の一つですな。


「白銀林道/野生生物探検記」11

●リスの住む森

14、クマシデの枝にリスがいた

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桑の実が終わり、リスが見えなくなった秋、クマシデの実を食べる姿を発見する。リスの後ろにたくさん果穂が生っている。
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果苞を開くと松の実のような小さなツブツブがたくさん付いていた。食べてっみたら脂肪が多く、美味くて高カロリーなのが分かる。
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 2005年の秋のこと。桑の木周辺は桑の実が終わってからすっかり静かになり、小鉄の姿も見えなくなっていた。食べ物が変わり、行動形態が変化したのだろうと想像できるが、しかしどう変わったかがまったくわからない。
 リスがいま何を食べてるか知りたくて、守山リス研究会のニホンリス観察の手引きにある「どんなものを食べていますか?」を見ても、ヤマグワの果実やアカマツの種子、アケビの果実は林道にあるものの、他に記載されてる多くが林道にないものばかりで、アケビも何度もチェックするがリスの姿を見ることはなかった。
 リスが年間で一番食べていると思える松の実のエビフライの状況を観察しながら、ヤマグリやドングリならまず食べているだろうと、林道を外れて遊歩道や森の中へ入ったりしていた。
 何度もボウズをくらっていたある日のこと。オオタカを見た遊歩道へ50メートルほど入ったあたりで、ふと見上げたら一匹のリスが15メートルほど先の細い枝で何かを食べている姿が目に止まった。この木は遊歩道から数メートル笹ブッシュの中へ入ったところに立っていた。
 リスまで少し距離があったがなんとか撮影でき、しばらく食事風景を観察させてくれた。リスが消えたあと、写真を拡大し確認すると、何か枝に生っている房のようなものを手に持っていた。その木の下あたりへ行ってみると幾重にも果苞が重なった果穂がたくさん落ちていて、果苞をめくってみたら、松の実のような小さなツブがたくさん入っている。
 試しにこれを食べてみたら松の実のような脂肪があり、意外と美味い。クルミもそうだがリスはこのような高カロリーのものを食って高い運動能力を維持しているのだろう。この木は調べてみたらクマシデといって、林道周辺を探したらすぐに何本か発見でき、これが多くのリスのエサとなっているだろうと分かった。
 それから遊歩道のクマシデ通いがしばらく続いた。やっと見つけた新しいリスのエサだが、しかし狭い遊歩道の坂道を上って近づくと、リスからはこちらが丸見えで、足場は平らでないしイスやベッドを置くスペースもない。どこかいい場所がないかとクマシデの下まで行くと今度は高い笹ブッシュが邪魔で枝のほとんどが見えなくなる。とても観察しずらい場所だった。
 しかたないので、最初に発見した場所までそっと行き、立ったままリスがいないか確認し、しばらく待ってこなければあきらめる、という具合。それでもクマシデの実がなくなる短期間に何度か出合え撮影することができたのだ。
 その翌年の秋も期待して行ってみたが、遊歩道のクマシデは果穂がほとんど見られず、リスももちろん現れなかった。前年、あれほどたわわに果穂を付けてたのに、次の年はまったくダメなんてことが植物にあるんだとこのとき初めて知ったのだ。 
 その後、他の場所でもクマシデを見つけ、リスがいないかチェックしたが、何度観てもその姿を確認できることはなかった。だが、2007年の10月にまた遊歩道のクマシデでリスの姿を2、3度見ることができた。ただ、そのころから周辺の松枯れがひどくなり、リスの姿がめっきり減り、巣もエビフライさえもだんだん見えなくなっていったのだ。


「白銀林道/野生生物探検記」10

●リスの住む森

13、桑の木の橋を縄張りとするオスリスを「小鉄」と命名

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2005年6月25日撮影。尾が「へ」の字に曲がり、右耳の中程が「コ」の字形に大きく欠けたリスを「小鉄」と命名。睾丸が黒ずんで膨らんでいるのは生殖期のオスリスの特徴。オープンで危険な松の橋の上で毛づくろいを始めた。小鉄の巣から10メートルぐらいの場所。
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松の橋のとなりにあるミズキの枝に現れた小鉄。拡大してみると右耳がコの字に欠け、尾がへの字である。後ろの松が上の写真の松。
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桑の木の橋の反対側の木へ現れた小鉄。その距離5メートルもないぐらいで、私を見ながらどうしようか迷っているが、慣れを感じさせる姿だ。松の橋を渡り、山側のブッシュを走り、桑の木の橋へ渡ろうとしている。


 私は撮影した写真を情報を得るため何度も見直しているが、桑の木やミズキ、ヤシャブシの橋に出てくるリスの写真を見ていて一匹のリスの尾の形に特徴があるのに気づくようになってきた。
 尾が「へ」の字状に曲がっていて、リスらしく尾を丸めた姿をしないのだ。これで個体識別できないかとピンボケ写真まで詳しく見ていくと、2005年6月25日に撮影した尾がへの字のものの中に右耳の中程がコの字形に大きく欠けているオスリスの写真があった。
 オスと分かったのは生殖期に入ったオスリスは睾丸が膨らみ黒く色づくことから。
 それからまたすべての写真を調べなおしたら、尾が曲がりコの字に欠けた右耳の個体がたくさん確認できたのだ。尾が中折れしたり耳が大きく傷ついているから、当時流行っていたマンガの「じゃりん子チエ」に登場する傷だらけの歴戦の強者猫「小鉄」みたいで、その名前をもらい「小鉄」と命名したのである。
 この小鉄の個体識別ができたことと、小鉄が松の橋の隣の松に発見した巣に入る写真から、桑の木の橋の実を食べに来た別個体がいたことや、東へ50メートル離れた別の桑の木に何度か出た親子連れを桑の橋で見ないことなど分かってきた。
 また、桑の橋から東へ100メートル離れたあたりにも巣をいくつか発見し、小鉄とは別のリスが生息しているのが分かったし、その近くのミズキや桑の木にも何度か見ているし、リスは他の個体と意外と接近した生活をしていたのである。


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桑の木の橋から東へ100メートルで撮影した子リス。この周辺で親子連れを何度も見ているし、巣もいくつか確認している。追記:思い出した、このときは2頭の子リスが追いかけっこしてて、この木の上にもう一頭がいて、この子が追い詰めていたのだった。逆だ、この子が上のリスに何度も追い払われ、登ったり降りたりを繰り返していたのだ。噛み付かれたと思える鳴き声も上げていた。やはり記憶は危ういね。

 そして、私がたまたまビーチベッドを広げたのが、小鉄の巣近くで生活のど真ん中だったわけである。だけど、この長くたくさん実をつける桑の木やミズキのある魅力的な場所を捨てるわけにもいかず、何時間も陣取る私にかまっていられないと腹を空かせて出てくるようになったのだ。
 その後、別の桑の木をチェックしていて、ここから2キロ近く西の桑の木の実を食べるリスも観察できるようになったが、しかし小鉄のように姿を堂々とさらけ出してくれることはなかった。
 なぜ小鉄だけが出てくれたのだろうと考えてみたが、やはり私が何度も通ってきて、危険がないのを知り、慣れたのだろうと思えた。また、桑の木が15メートルぐらいと高いのと、橋を渡り逃げることもできるし、一度飛び出してみて恐怖が軽減されたかもしれない。
 それと、ビーチベッドで待っていたとき、林道の先からノスリが低空飛行してきて、目の前数メートルで慌ててターンして逃げたのが2回あったが、小鉄は人間を利用してノスリを回避してたかもしれない。
 ノスリはリスがいるときは上空を旋回していることが多いし、いつかリスの橋の枝に止まっていたこともあったが、私がいれば、少なくとも近づけないだろうし、テンだっていやだろう。のちに、ノウサギがテンから逃れるのに私を利用したことがあり、状況は違うがリスだって利用するかもと考えたのだ。


「白銀林道/野生生物探検記」9

●リスの住む森

12、ホンドテンとホンドイタチの出現

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2005年56月1日に撮影したホンドテン。ヤシャブシの橋を渡り、ブッシュへ消えたと思ったらヒョイと顔を出しこちらを観察した。
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テンより小型のホンドイタチが林道に現れ縁石を登り私の方へ近づいてきた。イタチも子育てする鳥など狙っているのだろう。

 テンやイタチの写真が、まさか動物カメラマン修行を始めたばかりのわたしに撮影できるとは思わなかった。 
 2004年、テンらしき姿は見ているが、ほんの一瞬のことでレンズを向けることすらできなかった。それに、テンは本来夜行性で行動範囲も広く、探してもまず出合うことなど不可能だと思っていた。実際、ネットなどのテンの写真は夜間の自動撮影のものが多い。
 ところが、2005年6月1日のことである。リスの橋のヤシャブシの根元近くを注視して待っていたら、反対の檜側からドサッというとても大きな音がして何かが飛び移るのが分かった。驚いて見ると、なんとリスよりずっと大きな動物だった。
 カメラで動きを追ったが、とらえることができず一気に枝を駆け抜け、ブッシュへ消えてしまった。と、思った瞬間、なんと、また戻って木に登り、ヒョイっと顔をのぞけ、こちらを見るではないか。慌てて3度シャッターを押したら、ぶれてはいたが、なんとかはっきり分かるものが一枚だけ写っていた。
 こいつは尾が黄色いしテンのようだが、顔が黒くて何者かよく分からなかった。あとで調べたら、これは夏毛のテンであることが判明する。
 その一週間後、今度はテン狙いで待っていると、午後1時30分ごろ、リスの橋の下の林道を渡る黄色い毛の動物が現れた。林道を横断し、縁石を登ったから、ブッシュへ消えるだろうと見ていたら、なんと縁石の上を歩いてどんどんこちらへ寄ってくる。
 最初、テンより小型だし、テンの子供かと思ったが、調べてみるとホンドイタチだった。イタチは子供の頃遠くで何度か見たが、茶色くてこれとどこか違うように思えた。チョウセンイタチというのもいるから、田舎のはそれかもしれない。
 そして、午後3時30分。
 またもやリスの橋の樹上でドサッと大きな音がして、前と同じ姿のテンが現れた。
 今度も一気に走り抜けてしまうかと思ったら、途中コブのところで一度止まった。そこで、なんとこちらを観察するそぶり。ここぞチャンスとばかり心を落ち着け、3度シャッターを切り、一枚にばっちりピントが合っていた。
 リスのかわいいポーズのアップ写真を撮るのが夢だったのに、初めてうまくいった写真が、もっと難しい昼間のテンになってしまった。
 2004年の同時期にテンを見たおりも山側のリスの巣の方へ上がっていった。これが3度短い期間に重なったから、テンはリスの子を狙っているかもしれないとぼんやり思っていた。
 しかし、今回はリスが通路としている高さが10メートルほどある同じ橋を檜の根元から垂直に上り、その枝先からごく細いヤシャブシの枝に飛び移ったのだ。こんなことは体重が230グラムほどと軽く、鳥のように身軽なリスにしか不可能で、リス専用の橋と考えていたから、まさか何倍も重さのあるテンに同じことができるとは思いもよらなかった。
 それが、6月1日に続き、6月6日も現れた。それにともないリスが出る回数が少なくなる。しばらく現れなかったときは、すでにリスの子がテンに喰われてしまったか、それとも別の巣へ引っ越したかと不安になった。
 あの木登りの上手さなら、リスの巣まで登ることなどいとも簡単にやれるだろうし絶体絶命のように思えたのだ。
 だが、6月12日、撮影をあきらめ、生きていることだけでも確認したいと、遠くから観察していると、1匹のリスがいきなり目の前5メートルの枝に現れ、前年よく現れたあの桑の木を渡って行った。さすがに、テンと同じ道は避けたのか、ともかく全滅だけは免れた、と勝手に安堵する。
 しかし、その後も6月19日の午前9時過ぎと24日の同じ頃テンが現れ、リスも通路を桑の木に変更してから頻繁に出るようになって、テンはリスだけを狙っているわけではないような気がしてきた。
 天敵が同じ道を通るから、匂いを追っているものとすっかりそう思い込んでいたが、林道周辺にはノウサギもいればキジや小動物、鳥などたくさん子育て中である。これまでノウサギの死骸を林道周辺で2回見ているが、これもテンの可能性が高そうである。

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リス探しの始めの頃、多くのトンビが林道脇の上空を低く舞っていて、海の鳥山のようだし何かあると思い踏み込んでみたらこれが転がっていた。あとで気づいたが、トンビが食べずに舞っているのは、私が近づくまで誰かが食っていたということだろう。そのときは病気で死んだものと思ってた。

 もちろん、リスも狙うだろうが、よく考えてみたら、リスだって、巣のある木に直接登るようなヘマな真似はせず、隣の木や、もっと離れた木から枝伝いに巣へ戻るはず。
 巣は真下から見上げてもまず見つからないし、テンが匂いや目だけで探しても、そう簡単には見つけられないだろう。また、リスは複数の巣をもつと言われているから、子供を移して的を絞らせないようにしているかも。
 それに、松の木ばかりに巣を作るのは、もしテンが登り始めたら、松の樹皮なら大きな音がするし、早めに逃げることもできる、なんて推理してみた。まあ、これは事実かどうか分からないが、少なくとも親リスが簡単に食われることはないように思えてきたのだ。
 ただ、素人は一つの事象からすべてこうであるだろうと推理したり、ストーリーを作り上げたりと、勝手に思い込みがちである。それは釣りで何度も経験していること。
 推理に推理を重ねても、別の一つの事実の発露ですべてがひっくり返るのだ。希望的観測はよさなければと深く反省する。


ここまで書いて終わっていたのを、一部訂正や加筆してアップしてみた。次回から新たに書き起こして続きを。
白銀林道/野生生物探検記」8

●リスの住む森

11、オオタカ現る

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オオタカがホトトギスを食べた食痕。林道周辺にはハイタカもいるからその可能性もあるが、オオタカももちろん狩るだろう。
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オオタカが上空を旋回していた。空など写すとレンズの汚れがよくわかるね。


 リス観察3年目の4月初旬、桑の木周辺での待ち伏せ作戦は続いていた。
 だが、まだ桑の木は新芽がふくらみ始めたばかりだし、桑の木を隔てた前後二つの橋は何度も渡るものの、桑の実を夢中で食べるシーンはまだだいぶ先。ときどき、橋の枝の新芽を食べているところは見られたが、つまみぐい程度である。
 リスが橋を利用しているのは分かったが、依然どこへ行くのか、何を主に食べているのか分からないし、じっくり観察できることはなかった。
 そこで冬の間に1キロほど林道を進んだところに発見した2個の巣の近くで待ち構えてみることにした。リスの行動半径から考えるとこの巣の主は桑の木を渡るリスとは別の縄張りのものになるだろう。
 この巣は、白銀林道から遊歩道を山側へ50メートルほど上った松に一つと、そのまた50メートルほど上の松に一つある。近くでリスに遭遇しているので、まずここに生息しているのは間違いない。
 この遊歩道を林道から200メートルほど山側へ上ったところに大きな桜の木があり、そこが檜の植林地と自然林の境目となっている。この人目に付かない、大きな山桜が芽吹くころ、リスが新芽でも食べに出るのではないかと思ったのだ。
 そして、その桜の木の下、檜林の中へ数メートル入ったあたりへ三脚とイスをセットし、待ってみた。薄暗い檜林の中から明るい自然林を見る構図である。
 そしたら、またもや予想があたって、30分ほどしてガサゴソ笹の中を何者かが走る音がし、続いてガリガリ、ジョリジョリと桜の木を登る音がした。しかし、途中まで上っては降り、上っては降りを繰り返すのだが、木が大きく枝もたくさんあり姿がどこなのかまったく見えない。
 そのうちこちらの気配に気づいたか、結局その日はそれっきりとなってしまった。  
 このポイントの2回目はまったく音沙汰なしで、3回目に大きなドラマがあった。
 まず、前回は桜の木に近すぎたと反省し、場所を少し離したが、今度はその構えた場所の側の細い桜で「キュルルルル」と大きな鳴声が上がった。リスがまさかこんな桜の小木に出るとは予想してなかったから、またも失敗。
 このときも姿は見えなかったのだが、でも、この警戒音から、間違いなくリスが巣から出てこのあたりでエサを食べているのは分かった。
 ところがである。しばらくして、そこから50メートル離れた檜林の中にある小さい池でとてつもなく大きな「バシャン、バシャン」という音がした。
 この直径10メートルほどの水たまりのような池は、深さ30センチもないほど浅く、晴天が続くとすぐ枯れるからさかななどまったくいないもの。しかし、池のコイが跳ねたよりもっと大きな音がした。
 ただ、その少し前、檜林の中を大きな鳥が目の前を音もさせず滑空していった。速くて目で追えないし、大きいといってもカラスぐらいだし、あまり気に止めてなかった。だからそれが何者かはまったく分からない。でも、考えてみるとこいつが原因としか考えられなかった。大きな鳥が羽を広げて水面を叩いたらそんな音がする、と思えるものだった。
 水場にそっとくる鳥もいたが、そんな小鳥ではこれほど大きい音を出せないだろう。その小鳥を先ほどの鳥が襲ったか、水を飲みにきた小動物でもとらえたかもしれないと、あとで痕跡を探してみたが、しかし何も発見できなかった。
 家に帰って鳥類図鑑で調べたら、そんなふうに鳥や小動物を襲うもので、あのぐらいの大きさの鳥はオオタカしか考えられなかった。オオタカはイメージしていたよりかなり小さく、カラスより少し大きい程度。何度も解説を読んでいたのに、なぜかカラスよりもっとずっと大きいと思っていたのだ。
 そいつが気になり、次からはカメラを水たまりに向けて待機してみた。
 そして、リスを待つのと同じように待っていると、少し先の林ででクヮー、クヮーという低い鳴き声が聞こえたかと思ったら、しばらくして大きな鳥が林冠をかすめて頭上近くに飛んできた。
 どこかの檜のてっぺんあたりに止まろうと羽をいっぱいに広げるその姿は、図鑑で目に焼き付けていた、あの勇猛なオオタカだった。それも続けざまにもう一羽。
 そして、「ケッ、ケッ、ケケケケ」とか、「ピー、ピー」とか、絞り出すような低い声で「クヮー、クヮー」とか、これまで聞いたことのない、なにか周囲を威圧する、獣にも思える鳴き声を20分ほど聞かせてくれたのだ。離れた位置の2羽で鳴き交わすようなこともあった。
 50、60メートルぐらい離れていたし、どの木に止まっているかさっぱり分からなかったが、ドキドキしながら聞いていた。
 これまで同じ猛禽類のノスリはよく目にしていた。
 ノスリは空を舞いながらも、「ピーョ、ピーョ」と鳴くから、トンビの「ピーヨロロ~、ピーヨロロ~」とは聞き分けられたが、これまで「ピー、ピー」と「ピーョ、ピーョ」は混同していたと思う。この「ピー、ピー」はそれまで何度も聞いていたはずだが、姿が見えないからノスリと判断していたのだ。
 また、オオタカもノスリ同様空高く飛ぶものと漠然と思っていたが、姿を見ないのは、森の中や低いところを音も立てず飛んでいたからだった。オオタカがこの林道にいるのはリス同様誰にも聞いたことがない。人に見つからずこれまでずっとうまく生きてきたのだだろう。
 リス探しから、すっかり気持ちがオオタカに傾き、次からもしばらく同じポイントへ通ってみた。
 しかし、檜林の中を滑空するのを一度と、近くで鳴き声を3度聞いただけで、あの羽を広げた勇姿はを二度と見ることがなかった。
 ただ、鳴き声が聞き分けられるようになってからは、林道周辺でオオタカが活発に活動しているのが分かってきた。姿はめったに見られないし、見つけても遠くからだったり。しかし鳴き声は意外にもあちこちで聞けたのだ。
 水たまりポイントはオオタカにとって一時のもののようで、2週間ぐらい後に水が枯れるとさっぱり現れなかった。そして、リスもこの場所で巣材の杉の皮をくわえて運ぶ途中のものを一度目にしただけに終わる。だからリス観察ポイントの新規開拓はまだ中途のままだった。

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リスが巣材の杉の甘皮を剥いでくわえ巣に帰るところ。

 オオタカの出現は驚きだったし、オオタカは当然リスも襲うだろうから、リスとのかかわりをもっと詳しく知りたいと強く思った。森の中を音もさせず自在に飛ぶオオタカは、ノスリよりも手ごわい天敵かもしれない。
 オオタカはその後何度も目にするようになり、ときに上空をノスリやトンビのように旋回する姿も見るが、林道からカメラを向けるとこちらの視界からすぐ逃れ、警戒心の強いのが分かる。また、林道を歩いていると、脇の立ち木からすっと飛び立ち、森の中を滑空して消えていくこともよくある。これは林道でエサを採るキジバトなどを待ち伏せしているのだろう。後に何度も鳥を食べた羽根がむしられた現場に出合い、それがオオタカの仕業だと分かったのだ。


この項、前項のミズキの後にしたが、日付からして前にすべきだったね。そのうち直します。
「白銀林道/野生生物探検記」7

●リスの住む森

10、ミズキの花を落とすリス発見

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ミズキの木の枝を走り回り何かを食べているリス発見。しかし、茂った葉に隠れ何をしてるかわからないし撮影もできない。
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ときどき何かを落としていて後で何だろうと探すと、ミズキの花だった。
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始め、この花の花茎を食べていると考えてたが、花茎ならこれほど同じように揃った花序の切り取り方にならないだろうと思うようになったし、花茎を食べたなら食べた場所が短すぎる。顔にもアブラムシがたくさん付いてたし、アブラムシをなめていたと結論してもよさそうだ。

 リスの橋の桑の木の並びにミズキという木が何本かある。
 このころ、植物音痴だった私には、当然のように名前を知らないものだった。ところが5月20日、林道の橋を渡ったリスがこの木の枝に現われ、なにか食べるような動きをした。
 近くだし、これはチャンスと、シャッターを何度も切り、300ミリレンズを購入してから初めてとなる木の上で動き回るリスの写真を数枚撮ることができた。
 リスは体を伸ばし、枝の先の何かを食べているようだが、しかし葉に隠れてよく見えない。撮影するに枝や葉が邪魔でなかなかシャッターチャンスがこないのだが、10分ぐらいはこの木の枝を忙しく飛び回っていた。
 食べるときは同じ姿勢のまましばらくじっとしているが、葉に隠れて姿が見えないことの方が多かった。辛抱強く観察していると、ときどきリスが何かを落としているのに気づいた。
 リスが消えたあと、そこへ行ってみると、白い固まりがたくさん落ちている。それを拾い集めると、枝サンゴ状に広がったミズキの花だった。切り口が新しく、リスがこの花を落としていたのは間違いなかった。リスはこの茎の軟らかい部分だけを食べているだろうか。
 ミズキの花を手にしてみると、強くべたつき、みると小さなアブラムシがたくさん付いていた。あとで写真を拡大すると、リスの顔や手などにもプツプツと白い虫が付着している。リスは茎でなくアブラムシを食べていたのだろうか。
 どちらか分からなかったが、でもこれで一つリスの新しいエサ場発見である。
 それにしても、まったく気にも止めなかったこの木、それから、注意してみると、林道脇に驚くほどたくさんあって、緑の葉の中に真っ白い花を咲かせていた。
 また、雨も降らないのに、ミズキの下の路面や草の葉がそこだけ濡れていることに気付いた。そして、その上を歩くと、靴の底が、ペタペタとくっついた。ミズキは水をたっぷり吸い上げ、密のようなしずくをポタポタとたらしていたのだ。これから「水木」と名付けられたのだろう。
 その後、何度かリスがミズキをの花を食べる姿を目撃するが、それはわずか3、4週間ほどの間だった。花はすぐ終わり、実を付けたりで、リスのエサとしたら一時的なものなのだろう。
 ただ、リスはヤシャブシの枝を渡るとき、新芽をつまみぐいのようにして食べる姿を目撃しているし、桑の新芽も食べていたし、森には新芽や花がたくさんあるから、かなりの頻度でこれら植物の軟らかい部分を食べているのが想像できた。
 だがしかし、数年の期間を経て、ミズキの花茎でなく花に付いたアブラムシを食べている可能性を検討し、今は切り取られた花序が同じ形だし、花茎を食べているとしたらその幅が短く不自然で、アブラムシを食べていたとする方が自然な気がした。なので、アブラムシを舐めとっていたと結論したのだ。

「白銀林道/野生生物探検記」6

●リスの住む森

9、リスの橋で待ち伏せ作戦

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前がオスで後ろがメス。これは後に尾を骨折したのか「へ」の字型の尾となったオスリスを識別できるようになったことで判明した。
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リスの生殖行動は半日と言われているがもう少し長いかも。しかし、メスがオスを追っているのはどういうことだろう、普通反対だが。
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この3点の写真のデータを失っていて、このサイズの旧ブログからコピーしたものしかない。左の尾がへの字なのを後に「小鉄」と命名。


 夏の間あれほど姿を現してくれたリスが、いまどこで何をしているのだろう。リスを観察するには、あの桑の木のように、リスが執着するエサ場が見つかればいいのだが、松ぼっくりやどんぐり、栗はいたるところにあるし、ここに現れるというポイントが絞れない。
 それに、リスは、耳も、鼻も人間よりすぐれているから、あちこち探し歩いても当然リスが先に察知し身を隠す。人の姿を見なれた林道沿いならまだしも、森の中で大きな音を立てて歩き回る人間は絶対的に不利。だから追い回すような探し方はまず無理だろうと思えた。
 そんなぐあいで、どこで観察できるだろうとずっと頭を悩ませていたが、なかなか答えが見つからないものだから、気持ちはついリスが現れた桑の木に戻ってしまう。そんなとき、ふと、リスが何度か実のない桑の木の枝を伝って林道を渡り消えていった姿が思い出された。
 桑の実がなくなり、姿は見られなくなっても、一日に一度ぐらいこの枝を通っているのではないかと考えたのだ。
 エビフライの分布は広いからリスはかなり移動しているだろうし、他のエサを求めるとしても、この通路を利用するのではないか。
 ただ、林道を渡ることのできる橋は、あちこちにあった。そのためどこを通るか分からないが、リス観察したこの桑の木周辺に何箇所か巣が集中しているから、ここで待ってみようか、なんて考え始める。
 そして、リス探し2年目の春となる3月初旬のある日、その考えを実行に移してみた。
 ニコンD70というデジタル一眼を購入したことも、それを後押しした。 
 それで、古い三脚を持ち出してきて、道路にセットし、イスに座って待つことにした。前年リスが何度も渡った桑の木は、台風で太い枝が折れ、リスが飛び移るには隙間が開き過ぎたと思えるから25メートルほど離れたヤシャブシの木の枝をターゲットにした。
 桑の木に出てきたリスが、帰りにこの枝を一二度渡るところを見たことがある。そのときは、すいぶん遠回りするなー、私の観察位置が近すぎてプレッシャーがかかったのだろうとしか思ってなかった。でも、考えてみたら一度でも通ったのだからまた使うことだってあるはずだ。
 そのぐらいのつもりだったが、この予想がぴたりと当たった。
 どのぐらい待っただろうか、ふいにガサゴソ音がし、山側の木の根元にリスが現れた。
 途中一度何かを警戒するように伏せの姿勢で止まり、しばらくそうしてから、一気に駆け抜け、細い枝先からジャップして反対側の檜の枝の中へと消えてしまった。
 その間、たった10秒か20秒だったかもしれない。カメラでまともにとらえることなどとてもできなかった。でもやはりリスは橋を渡り、海側の森へエサを採りに通っていたのである。

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夏に観察した桑の木から25メートルほど先にあるヤシャブシの木がリスの通路になっているかもと待っていると・・・。

 この頃、リスがあまりに見られないから、鳥にカメラを向けたり、林道を散策したりしていた。
 でも、この日から林道へ通うたび、ヤシャブシの前で一度は三脚とイスをセットするようになる。ただし、1、2時間待ってリスがでないと簡単にあきらめ、鳥や風景にまでレンズを向けていた。橋を利用しているのはわかったが、まだそのときは、リスが毎日、しかも何度も周辺の橋を渡っているなど思いもよらなかった。
 森に深く分け入って、広いエリアにノウサギやイノシシなどが生息しているのを知り、リスの痕跡もたくさんあって、森全体が前にも増していきいきと感じられ始めたときだったから、なかなかじっとしていられないのだ。
 そんな3月の27日。釣りでいうなら大漁の日にあたった。
 前回、リスの出た木にカメラを向けていると、後ろの方でガサゴソ、ジョリジョリとリスが木を登る音が聞こえた。
 振り返ると、姿は見えないのだが、近くの太い松の木に登っているように思える。目で音を追っていると、その松の高い枝の股にヒョイと顔を出し、その枝を伝って林道を渡り、山側の木へと飛び移った。
 リスは先にこちらの存在に気付いていて、カメラをセットした木に登らず、ブッシュを走って、後ろの松の枝を利用したのだ。しかも見られないように、木の裏側を駆け登った。知恵を働かせたつもりだろうが、その音はどこからでも聞こえるほど大きかったのだ。
 しかし、前年の桑の木に出たとき、この松の枝を渡るのをみたことはなかった。小枝や松葉が少ないからまるはだかで、一見リスが橋にするには危険そうにみえる。渡りきるまでに、空から敵に発見される可能性が高い。だからまずこの木に出ないだろうと思っていたがそれは人間の浅はかな感覚だったかもしれない。
 この日はそれだけで終わらなかった。1匹かと思ったら、しばらくして2匹同時に現われ、この枝の上でくっついたり離れたりとしばらくイチャイチャしてたのである。
 こちらが見ているというのに、まったく無視。調べたら生殖時期にあたるし、まず夫婦だろうと思えた。
 リスは都合、5回現われ、一匹だったり2匹だったりしたが、口に何か大きなものをくわえて運んだりと、この日はこの松の枝の橋ばかり利用した。
 このときはじめて気付かされたのが、こちらがが陣取っていると、あきらかにそこを避ける行為をとったこと。
 そして、このあと、ときどき後ろを振り返ってみるようになったが、やはりこっそりと、この松の木の通路を走っている姿を目にした。
 また、逆に松の木の方へ構えていると、今度は反対のヤシャブシの橋を渡ったりと、あきらかにこちらの裏をかくような行動がみられたのだ。通路を渡るのに、速ければ10秒とかからないのだから、これまでずいぶん見逃してきたに違いない。
 しかし、リスはブッシュから姿を出すまでは慎重だが、一度姿をさらすと、かなり大胆で、まるでこちらがいないかのようにふるまうのだから不思議である。
 
「白銀林道/野生生物探検記」5

●リスの住む森

8、森の奥まで分け入り巣を探す

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作業道や遊歩道を普通に歩いてるだけでは分からないが、一歩足を踏み入れたり体の角度を変えたりすると見えてくる。
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 リスがよく見られたのはクワの実のある6、7月の間だけだった。
 その後ぱったり出てこなくなり、またも音信不通となる。あまりに見られないから、リスが桑の木の上で繰り広げたファンタジーの世界、目の前に展開された物語は幻であったようにさえ思えてくる。
 こうなると、いまリスがどんな生活をしているかますます知りたくなる。 
 ただ、ここまでの経験から、行き当たりばったりで探そうとしても、不可能なように思えた。そこでまず、林道周辺にリスがどのぐらい生息しているか、分布を知るためにもっと広い範囲のリスの巣とエビフライを探してみることにした。
 そして、森へ分け入り、ときに山側へ数キロ、谷側へも1、2キロほど、急斜面を転げ落ちそうになりながら歩いてみた。
 結果、林道は12キロあるけど、リスの生息地はかなり限られているように思えた。海からの強風のせいか林道沿いの山は木のない広い笹原やススキ野などが続き、これが森を分断していた。リスはこんな開放池ではテンやキツネなどの天敵から逃げられないはずだし餌もないから住めないだろう。
 そう結論し、林道沿いの開放地から開放地までのしかも松林のある数キロのエリアの探索となった。これまで発見したリスの巣がすべて松の木の上にあることから、そんな場所を集中的に探った。
 そして、はじめ森の初心者は道なき道の急斜面を垂直に歩き始めたが、これがあまりに大変で、すぐ斜めに歩くのが得策と知る。ノイバラの棘にひっかったり、笹をかき分けたり、大きな倒木を乗り越えたりとかなりハード。これをあとで「藪コギ」と言うのを知った。両手でかき分けるから「コギ」なんだ。
 そんな苦戦をしているうち、森の中のあちこちに昔の作業道らしきものがあって驚かされたり、奥深い松林へ行くにはノイバラなどのない植林地の中を歩くのが楽なのも分かってくる。作業道の一つは林道下にあるゴルフ場が、飲み水を沢の奥の水源からとるためのものだった。
 また、こんなところにも作業道が、なんて思って歩いていたら、途中、あちこちで太い枝がとおせんぼしていて、とても人が立ったまま歩けないようなものがある。
 這いつくばって枝をくぐりながら、これはイノシシなどが踏み固めたケモノ道であるナ、と確信する。ケモノも急斜面をまっすぐ登るのはさすがにきついとみえて、斜めに歩いていたのだ。これがとても人の入らなそうな山頂付近や谷の中にたくさんあった。
 しかし、つい最近までまさかこんな身近な森の中に立派なケモノ道があるなど知りもしなかったのだから驚きだった。
 そんな発見をしながら探し歩いた結果、トータル12個のリスの巣を見つけることができたのだ。
 意外だったのが、森の松一本一本を見上げて歩いてみても、森の中心部に巣はほとんどなくて、逆に林縁部にばかりにあったこと。しかも高木には作らず、せいぜい14、15メートルまでの木。低い巣では7、8メートルもないぐらいのところにあった。
 この理由は、地上の天敵であるテンや、空から襲うノスリなどが、人の往来のある林道や散策道を嫌うからではないかと思った。高い木の頂上にないのは空から発見されないためである。
 しかし、作業道や遊歩道から一歩足を踏み入れたり、体の角度を変えれば見えるけど、普通に歩けば気付かれないよう上手に作ってある。テンや猛禽の嫌う人間をうまく利用しているようにしか思えないのだ。人間に見つかるこわさ「視線圧」とでもいうものか。
 だが、エビフライは巣のあるなしにかかわらず、いたるところにあった。
 リスの行動半径は2、300メートルから遠くても500メートルまでと言われているが、エビフライの分布からもっと広く移動しているかもしれないと思えた。それに、リスの巣はまだ見落としが多くありそうで、またすぐ新しいものもでてくるだろう。
 そして、そのとき見つけたリスの巣と巣の、最も遠いのは直線でおよそ4、5キロの距離。
 これらから考えても、リスが多数いるのは確実だが、1匹が2つ以上の巣を持つと言われるし、その総数がまだどれほどなのかはよく分からない。
 そんなことを繰り返しながらも、リスに出合わないかと期待したが、林道を歩いているとき移動中と思われるものに2、3回遭遇したぐらいで、「キュルルル」と警戒音を発してすぐ逃げていった。
 リス探しを始めた1年目の秋から冬は、そんな山歩きをしたり、林道を往来した程度で終わってしまったのである。
「白銀林道/野生生物探検記」4


●リスの住む森

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保存してたのをパソコンの故障のとき消してしまったとしょげていたけど、別のフォルダにこの1点だけあった。


7、ノウサギと並んで木いちごを採る

 ノウサギはクルマをゆっくり走らせているときや、歩いているとき、急に道路へ飛び出してくる。
 最初、慌ててピョンピョン逃げるが、少し離れると、なぜか足を止めることが多い。これが不思議なのだが、しばらく固まった状態でこちらを見ている。こっちが動かなければ、そのままお見合い状態が続くことになる。
 ノウサギは、リス探しの森の中でその姿を見かけることはまずなく、出合うのはもっぱら林道上。ただ、ブッシュをガサゴソと動く音はよく聞くし、糞は森中にころがっている。
 ノウサギは、あの大きな耳からも分かるが、人間よりはるかに先に相手に気づき、身を隠してしまうのだろう。森の中だと枯葉などで足音が大きくなるし、耳の大きなノウサギが有利で人間は圧倒的に不利。
 ところが驚くなかれ、一度だけ、ノウサギと並んで木いちごを採ったことがあるのだ。
 うまそうに熟れた木いちごを林道脇に見つけ、二、三歩足を踏み入れ採って口へ運んだり、小さなデジカメで撮影したりしていた。そのとき、何かの気配がして横を向いたら、信じられないことに私のすぐとなりにノウサギがいたのである。手を伸ばせば触れる距離だ。
 これはチャンスと思い、顔だけ横向きにしデジカメを起動させたら、その音に驚いて2、3歩跳ね、林道へ出た。だが距離はまだ2メートルあまりで、こちらとの間にわずかな草があるだけ。草の隙間からよく見える。でも一度シャッターを切ったがやはり草が邪魔なので、腰を伸ばして上から写そうと動いたら、ピョンピョン跳ねて、林道上を20メートルほど走って逃げた。
 そこでまたしばらく止まっていたが、しかたないなーってかんじに、ゆっくりとブッシュの中へ入っていった。
 しばらくは、どこから現れたのだろうと、不思議でしょうがなかった。
 私より後から来たのなら、音がするはずだし、まさか人間がいるのにとなりへ並ぶとは思えない。考えられるのはもともとそこへいたこと。ノウサギが木イチゴを食べていた現場へわたしが知らずにいきなり入ってしまったのだ。
 背丈の低い草むらだが、ノウサギは身を伏せて、やりすごすつもりだったはず。ところが、木いちごに目を奪われた私が突然足を踏み入れた。でも、ノウサギは人間が自分の存在に気付いてないことを知り、なおもじっとしていた、ということだろう。普通なら草むらへ入った瞬間逃げ出しそうだが、よほどこの木いちごにご執心だったのではないか。
 というのも、その近くでお店を広げパソコンを打っていると、また知らぬ間にノウサギが木イチゴのところへ現れたのだ。桑の実を食べるときのリスの場合もそうだった。
 森の野生と人間の距離は案外こんなもので、これまでまるで気付かずに通り過ぎていただけかもしれない、と、だんだん強く確信するようになってきたのである。
 イノシシのときもそうだった。
 それまでイノシシが生息するのは聞いていたし、散歩の途中でも地面を掘り返した跡などたくさん発見してもいた。
 だが、あるときイノシシの寝床を見付け、近くに山芋を掘ったばかりと思える新しい穴や、つい先ほど落としたような新しい糞を発見し、めずらしくてカメラにおさめていた。寝床は、イノシシが横に寝てちょうどおさまるぐらいの地面のくぼみで、ふかふかの落ち葉の上で寝返りをうっていたら、重みでだんだんへこんでしまった、といえるようなもの。
 そして、撮影が一段落し、一休みしようと、寝床から30メートルほど離れたあたりの倒木に腰をおろしたら、3メートルほど先の灌木の中で、突然咆哮というか悲鳴というか、ともかく腰を抜かすほどのでかい吠え声がした。
 一瞬、飛び上がってカメラの三脚をかかえて身構えた。
 二三度こちらに向かって吠えたから、すぐ飛び出してくるものと覚悟したら、鳴き声が急に横を向き、森の中をドドドドドっと大きな音を立て、走って逃げはじめた。
 バキバキと枝を折る音をさせ、100メートルぐらい一気に斜面を下っただろうか。ほんとに猪突猛進するようで、どこかにぶつかるのじゃないかと心配するほど。その音はしばらく続いていた。
 イノシシはたぶん、私が森に入ったときはまだ寝床に横になっていて、先に気づいてブッシュへ隠れてやり過ごすつもりでいたのだろう。まさかその身を隠しているすぐ前まで人がきて足を止め、しかも座り込むとは思いもよらず、パニックに陥ったのだ。私の方もこんな大物が、昼間ひっそりと森の中に隠れているとは思いもしなかった。
 そのまま通り過ぎれば、平和に終ったものを、森の野生が気になりはじめた一人の人間が、イノシシの領分まで侵し始めたのである。

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イノシシがいままで寝てたと思える落ち葉のくぼみ。これを撮影したあと、休憩しようとして吠えられた。