湯河原・真鶴の野生生物を観察し、写真に記録すること。
「白銀林道/野生生物探検記」をブログに

リス5 のコピー 2
ニコンのアナログ一眼レフ(マニュアル)に180ミリと2倍のテレコンを付けて手ブレ写真を量産してた頃のもの。


私が旧ブログ「森の海▲海の森」を始めたのは湯河原の白銀林道で一匹のリスと出合ったことがきっかけである。リスとの遭遇は2002年だったか2003年だったか記憶が定かでないが、2004年にニコンデジタル一眼レフD70を購入し撮影を始めているから、その前年か前々年なのは間違いない。写真はニコンのアナログ一眼レフ(マニュアル)に180ミリと2倍のテレコンを付けて手ブレ写真を量産してた頃のもの。

リスを探し回っているうち、いろんな発見があり、それを記録したり、誰かに見てもらい、話し合えたらいいなと(リスを語るブログなどほとんど無かった)と始めた(たしかそのはず)けど、その後どんどん変化し、今は料理ブログのようになってしまっている状態。

で、ブログは散文的だし、時系列でみると最初の方は間違いや勘違いなどあるし、いつかは消えてしまうだろうし、たくさんもらった感動の記憶も薄れるかもしれない。そんな気持ちもあって、ストーリーのある文章にしておこうとずいぶん前から書き始め、かなりの量まで行ったけど、途中で止まってしまっていた。これをあらためて見直し「白銀林道/野生生物探検記」としてまた続けることにしようと思う。「白銀林道/野生生物探検記」のカテゴリーを作り、そこに一回分小見出し1、2本ぐらいずつまとめるのでヒマな方は読んでみてくだされ。



「白銀林道/野生生物探検記」


 これは、小さなモーターボートで長年海に遊んできた釣り師が、近くの森に海の中と同じような野生が残されていることに気づき、釣りザオをカメラに持ち替え、次々と意外な発見をしていくその記録、フィールドノートである。
 人が日常の生活空間で野生動物を目にすることはめったにないこと。ところが、近くの森へ出かけ目をこすってよくよく観察してみれば、すぐ脇の木の枝や草むらにじっと息を潜めて隠れているかれらがいることがわかってくる。
 子供のようにただ無心になり、森の中の不思議を探す。それだけで見えないはずのものがたくさん見えてきた。そして、これらの命を観察していると、人という動物である私の命の形がおぼろげに浮かんでくる。
 都会生活ではほとんど野生を感じず、それでも生きていけたが、しかし最先端の巨大な超高層ビル一棟でも人間以外森のたった10メートル四方の命の数さえないのである。森の10メートルの中には野ネズミが一匹ぐらい住んでいるはずだし、甲殻類やクモ、イモムシなど昆虫類がたくさんいる。それだけでなく、キツネやタヌキなどの哺乳類や鳥達が一日に何度か通り抜けていることだろう。立ち木が10本もあればいろんな実が生るし林床には多くの野草が花を咲かせるのだ。
 田舎の森でカブトムシやクワガタをとったり、川に潜り魚を追ったり自然の中で生き物と遊ぶ子供時代を送った私には、都会のビルばかり立ち並ぶ風景はとてもつまらないもの。それが歳をとるとともに海へ森へと足を運ばせたのだ。


⚫︎リスの住む森

1、目の前をリスが!


 10数年前のある日、散歩の途中ほんとに偶然だが一匹の野生リスに出合った。場所は神奈川県の西の外れ、湯河原町の海辺の我が家からクルマで10分の白銀林道でのことである。
 この伊豆箱根方面の観光ルートから外れた細い林道は、相模の海から箱根山へ駆け上がる中腹の、標高500メートルあたりを東西に12キロほど走っているもの。湯河原町そのものが箱根火山の外輪山の東斜面にあり、日当たりがよく、落葉広葉樹林や松林の自然林が広がり、山菜や木いちご、桑の実など山の幸も豊富。
 土日は、何で知ったか東京方面からオートバイやマンテンバイクに乗ったカラフルな若者がときどき風のように通り過ぎるが、平日は地元の人もほとんど来なくて半日誰にも合わないこともよくある静かなところである。
 20数年前東京から湯河町へ越して来たが、気分が向くとここへちょくちょく散歩やジョギングに通っていた。
 ボート釣り師には、これまで走り回った相模湾から伊豆半島、房総半島、伊豆七島を一望でるこの場所は、海を眺めるのに最高な場所。ひらけた高台に立てば、いまこの海のどこかでマグロやブリが跳ねたり、クジラやイルカが泳いでいるのが感じられるのだ。釣りが好きになったのは海には大人が本気で遊べる自然があったから。
 だが、この林道へ長年通っているのに、リスを見るのはこれが初めてだった。まさか、人里近いこんなところに、リスが生息しているなど思いもよらなかった。日本の森はいまどこも杉や檜が植林され、植性が貧弱で、海のような本物の野生が残ってないと思っていた。長野や岩手など、自然の多く残る深い森まで出かけないとリスなどいないと思っていたのだ。

 ある秋の日の林道のことである。
 散歩の足を止め、あたりをのんびり眺めていると、山側斜面の木の上に何か動く大きな影をみつけた。
 はじめ、木々の間を飛び移るような動きをしていたから、そいつは鳥のように思えた。そして、いつものようにすぐこちら気付いてどこかへ飛んでいくだろうと見ていたら、そうしない。それどころか、枝を伝いながらどんどんこっちへ降りてくる。ジョリジョリと樹皮をひっかく音を立て、木を上ったり降りたりもする。
 「ン? 鳥じゃないゾ」
 「鳥よりずっと大きいし、長い尾もある」
 「ムササビか?」
 「いや、リスか?」
 ムササビはたしか夜行性だったし、もしかするとリスかもしれないと思った。
 そして、あれよあれよという間に、20メートルまで近づいてきた。やつからは道路の真ん中にポツンと立っているこちらは丸見えのはずだが、気づいてないのだろうか。
 もしも、ということもある。息をのみ、直立不動でぴくりともせず、目だけで動きを追った。
 そしたら、ついに林道脇まで降りてきて、道をアーチのようにまたぐ枝を伝い、こんどは私の立っているすぐ前の枝へ飛んだ。このときほんとうに息を止めていたかもしれない。
 それでもなおどんどん近づいてきて、目の前2メートルの枝を這い、私の足元ともいえそうな木の根元へ降り、海側のブッシュの中へゆっくり消えていった。
 一瞬、こちらの肩にでも飛び乗り、エサをくれとねだるかと思ったほどだ。
 しばらく呆然として、姿の消えたあたりを見やっていた。
 生まれて初めて見るリスは、小さくてとてもかわいかった。
 ピンと立った耳、クリクリの目、長い尾、動きまでが愛らしかった。
 またこのリスは美しかった。
 グレー一色だが、毛並みが実にきれいに見えたのである。
 だが、いくらこちらが身じろぎせず、石のように固まっていたとしても、リスの目に全身をさらしているし、こちらに気付いてないはずがない。このリスが野生であってほしいが、飼いきれず捨てられたペットか、鎌倉や江ノ島方面で繁殖していると聞く外来種のタイワンリスがここまで移動してきた考える方が妥当な気がした。
 しかし、わずかな期待もあった。林道周辺でごくまれにノウサギに出合うが、こちらが追わなければ、慌てて逃げようとしないから、これも最初は放されたペットかもしれないと思ったぐらい。でも、近くにうさぎ沢という地名もあり、あとで野生であるのが分かったのだ。
 そして、自宅へ戻ってすぐネットで調べてみた。
 すると、耳の形からニホンリスであるらしいと分かった。ピンと立った耳は、実は特に長くのびた一部の毛がそう見せていたのだが、これが印象的だった。タイワンリスの耳は小さく丸いし、体もずんぐりむっくり。ニホンリスの方がはるかに上品でかわいい。
 ニホンリスなら、野生であるかもしれない。しかし、10年以上通っているのに初めて目にしたし、あまりに無防備に姿をさらしたから、まだ信じられなかった。
 そしてそれからというもの、散歩や運動のための林道が、リス探しのフィールドへと急速に変化していったのである。


2、「エビフライ」発見!


 まずは、ホームページをあちこち調べてみた。
 それによると、ニホンリスは本州の中国地方あたりから北、青森県までに生息するが、関西以西ではほとんど見られなくなっているようだった。四国、九州にもいないらしい。
 ニホンリスは体長25センチ、尾の先まで入れると全長で40センチぐらいあるが、体重が230g前後と、ネズミやモグラよりは大きいが、ノウサギよりはるかに小さい。ヨチヨチ歩きの子猫という程度。
 そんな小型だからか、リスは500メートル四方ぐらいを生活の場とし、クルミやドングリ、松の実など木の実を中心としたエサをとっているようだ。強い武器をもたない小動物だから、深い森が無いと生きていけないのかもしれない。
 地元の誰に聞いても湯河原の森でリスなど見たことがないというが、しかし、分布だけでみるなら、この湯河原にも可能性は残されていた。
 ホームページをあちこち検索してみたが、当時野生ニホンリスの写真はごくわずかしかなくて、しかもエサ箱を置いて、自動撮影装置で撮ったものが多かった。警戒心が強く、いわゆるフツーに山歩きするぐらいではそう簡単に見られないようだ。
 ニホンリスは絶滅危惧種ほどではなが、特別な保護対象ともされてないということか。
 ホームページで特に目に付いたのが、名古屋市の守山リス研究会という市民団体が主体でつくったもの。少なくなったリスとリスの住める環境を守ろうと長年ボランティア活動をされている。
 ここに、リス初心者に参考となるものがいくつかあった。
 それによると、リス探しはまずリスの食痕、つまりエサを食べたあとの残りかすを探すのが早道のようだった。
 そして、もっとも見付けやすい食痕は、松ぼっくりのものだった。松の実は、松ぼっくりの魚のウロコのような鱗片の隙間に隠されている小さなツブ。リスはこの松の実が大好物で、鱗片を一つ残らず根元からかじり落として実を食べるから、後に芯の部分だけが残る。これが色も形もエビフライにそっくりで、ネットで「エビフライ」の愛称で呼ばれていた。あのエビフライ定食のエビフライである。
 リスはオニグルミも好きだが、林道ではこれを見かけない。でも松ならたくさんある。リス探しの始めはまずエビフライ探しからとすることにした。
 エビフライが見つかれば、野生のニホンリスが生息していることだけでも分かる。ぜひそれを確認したかった。
 だが、エビフライ探しとなると、森に分け入るしかない。
 山歩きの特別な装備を持たない海の男は、いつものズックとジーパン姿で、歩きやすい場所を探してほんのちょっとだけ林道からはみ出す程度に入ってみた。
 そして、落葉広葉樹林の中の松の木の多いところを目を凝らして一日歩いてみたが、松ぼっくりならいたるところにころがっているのに、エビフライは一個も見つからない。釣りでいうところのボウズである。
 ただ、このぐらいでめげたりはしないのが本物の釣り師。
 釣りは、大物や高級魚をターゲットにするほど釣れる確率が低い。ボウスを何度も経験しないと釣りの上達もない。だから釣りが上手いヤツほどボウズに慣れている。
 また、これは後に判明することだが、釣りの手法がリス探しに大いに役立つのだ。
 結局、エビフライ探しだけで数回ボウズをくらった。
 しかしあるとき、こんもりと盛り上がった落ち葉の上に、バラバラに解体された松ぼっくりの鱗片を発見する。よく見ると、その中にエビフライらしきものもある。思わず声を上げてしまいそうなほど嬉しかった。
 手に取ってみると、ほんとにエビフライそっくりで、エビの尻尾の部分まで付いていたのだから思わずニンマリする。
 そして、食痕の場所をよく観察してみると、周辺より少し盛り上がっていて、周囲の見晴しの利くようなところだった。次からそんなところ中心に探ししていると、こんどは倒木の上にエビフライを発見する。倒木の上にポツンとエビフライがのっかっていて、となりにドングリの殻まである。
 最初は何かの偶然だろうと思ったが、同じような倒木を見ていくと、なんとまたすぐエビフライが見つかった。
 そして、数ある倒木の中でも、より見通しのきく、しかし、そばに立木があって、何者かに襲われてもすぐ木に登って逃げられそうと思えるような場所にばかりあるのが分かってきた。リスが松ぼっくりを拾い、倒木の上で周囲に注意を払いながらボリボリやっているのが目に浮かぶ。でも、エビフライを地面に転がさず、うまく倒木の上に落とすものである。
 それからというもの、百発百中とまではいかないが、あの倒木ならとにらむと、ほぼ外れなしで見つけられるようになる。
 いたるところにエビフライを発見し、野生のニホンリスが、間違いなく生息しているのが分かった。それも一匹や二匹ではなさそうだ。
(つづく)
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