湯河原・真鶴の野生生物を観察し、写真に記録すること。
白銀林道/野生生物探検記」8

●リスの住む森

11、オオタカ現る

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オオタカがホトトギスを食べた食痕。林道周辺にはハイタカもいるからその可能性もあるが、オオタカももちろん狩るだろう。
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オオタカが上空を旋回していた。空など写すとレンズの汚れがよくわかるね。


 リス観察3年目の4月初旬、桑の木周辺での待ち伏せ作戦は続いていた。
 だが、まだ桑の木は新芽がふくらみ始めたばかりだし、桑の木を隔てた前後二つの橋は何度も渡るものの、桑の実を夢中で食べるシーンはまだだいぶ先。ときどき、橋の枝の新芽を食べているところは見られたが、つまみぐい程度である。
 リスが橋を利用しているのは分かったが、依然どこへ行くのか、何を主に食べているのか分からないし、じっくり観察できることはなかった。
 そこで冬の間に1キロほど林道を進んだところに発見した2個の巣の近くで待ち構えてみることにした。リスの行動半径から考えるとこの巣の主は桑の木を渡るリスとは別の縄張りのものになるだろう。
 この巣は、白銀林道から遊歩道を山側へ50メートルほど上った松に一つと、そのまた50メートルほど上の松に一つある。近くでリスに遭遇しているので、まずここに生息しているのは間違いない。
 この遊歩道を林道から200メートルほど山側へ上ったところに大きな桜の木があり、そこが檜の植林地と自然林の境目となっている。この人目に付かない、大きな山桜が芽吹くころ、リスが新芽でも食べに出るのではないかと思ったのだ。
 そして、その桜の木の下、檜林の中へ数メートル入ったあたりへ三脚とイスをセットし、待ってみた。薄暗い檜林の中から明るい自然林を見る構図である。
 そしたら、またもや予想があたって、30分ほどしてガサゴソ笹の中を何者かが走る音がし、続いてガリガリ、ジョリジョリと桜の木を登る音がした。しかし、途中まで上っては降り、上っては降りを繰り返すのだが、木が大きく枝もたくさんあり姿がどこなのかまったく見えない。
 そのうちこちらの気配に気づいたか、結局その日はそれっきりとなってしまった。  
 このポイントの2回目はまったく音沙汰なしで、3回目に大きなドラマがあった。
 まず、前回は桜の木に近すぎたと反省し、場所を少し離したが、今度はその構えた場所の側の細い桜で「キュルルルル」と大きな鳴声が上がった。リスがまさかこんな桜の小木に出るとは予想してなかったから、またも失敗。
 このときも姿は見えなかったのだが、でも、この警戒音から、間違いなくリスが巣から出てこのあたりでエサを食べているのは分かった。
 ところがである。しばらくして、そこから50メートル離れた檜林の中にある小さい池でとてつもなく大きな「バシャン、バシャン」という音がした。
 この直径10メートルほどの水たまりのような池は、深さ30センチもないほど浅く、晴天が続くとすぐ枯れるからさかななどまったくいないもの。しかし、池のコイが跳ねたよりもっと大きな音がした。
 ただ、その少し前、檜林の中を大きな鳥が目の前を音もさせず滑空していった。速くて目で追えないし、大きいといってもカラスぐらいだし、あまり気に止めてなかった。だからそれが何者かはまったく分からない。でも、考えてみるとこいつが原因としか考えられなかった。大きな鳥が羽を広げて水面を叩いたらそんな音がする、と思えるものだった。
 水場にそっとくる鳥もいたが、そんな小鳥ではこれほど大きい音を出せないだろう。その小鳥を先ほどの鳥が襲ったか、水を飲みにきた小動物でもとらえたかもしれないと、あとで痕跡を探してみたが、しかし何も発見できなかった。
 家に帰って鳥類図鑑で調べたら、そんなふうに鳥や小動物を襲うもので、あのぐらいの大きさの鳥はオオタカしか考えられなかった。オオタカはイメージしていたよりかなり小さく、カラスより少し大きい程度。何度も解説を読んでいたのに、なぜかカラスよりもっとずっと大きいと思っていたのだ。
 そいつが気になり、次からはカメラを水たまりに向けて待機してみた。
 そして、リスを待つのと同じように待っていると、少し先の林ででクヮー、クヮーという低い鳴き声が聞こえたかと思ったら、しばらくして大きな鳥が林冠をかすめて頭上近くに飛んできた。
 どこかの檜のてっぺんあたりに止まろうと羽をいっぱいに広げるその姿は、図鑑で目に焼き付けていた、あの勇猛なオオタカだった。それも続けざまにもう一羽。
 そして、「ケッ、ケッ、ケケケケ」とか、「ピー、ピー」とか、絞り出すような低い声で「クヮー、クヮー」とか、これまで聞いたことのない、なにか周囲を威圧する、獣にも思える鳴き声を20分ほど聞かせてくれたのだ。離れた位置の2羽で鳴き交わすようなこともあった。
 50、60メートルぐらい離れていたし、どの木に止まっているかさっぱり分からなかったが、ドキドキしながら聞いていた。
 これまで同じ猛禽類のノスリはよく目にしていた。
 ノスリは空を舞いながらも、「ピーョ、ピーョ」と鳴くから、トンビの「ピーヨロロ~、ピーヨロロ~」とは聞き分けられたが、これまで「ピー、ピー」と「ピーョ、ピーョ」は混同していたと思う。この「ピー、ピー」はそれまで何度も聞いていたはずだが、姿が見えないからノスリと判断していたのだ。
 また、オオタカもノスリ同様空高く飛ぶものと漠然と思っていたが、姿を見ないのは、森の中や低いところを音も立てず飛んでいたからだった。オオタカがこの林道にいるのはリス同様誰にも聞いたことがない。人に見つからずこれまでずっとうまく生きてきたのだだろう。
 リス探しから、すっかり気持ちがオオタカに傾き、次からもしばらく同じポイントへ通ってみた。
 しかし、檜林の中を滑空するのを一度と、近くで鳴き声を3度聞いただけで、あの羽を広げた勇姿はを二度と見ることがなかった。
 ただ、鳴き声が聞き分けられるようになってからは、林道周辺でオオタカが活発に活動しているのが分かってきた。姿はめったに見られないし、見つけても遠くからだったり。しかし鳴き声は意外にもあちこちで聞けたのだ。
 水たまりポイントはオオタカにとって一時のもののようで、2週間ぐらい後に水が枯れるとさっぱり現れなかった。そして、リスもこの場所で巣材の杉の皮をくわえて運ぶ途中のものを一度目にしただけに終わる。だからリス観察ポイントの新規開拓はまだ中途のままだった。

23 のコピー
リスが巣材の杉の甘皮を剥いでくわえ巣に帰るところ。

 オオタカの出現は驚きだったし、オオタカは当然リスも襲うだろうから、リスとのかかわりをもっと詳しく知りたいと強く思った。森の中を音もさせず自在に飛ぶオオタカは、ノスリよりも手ごわい天敵かもしれない。
 オオタカはその後何度も目にするようになり、ときに上空をノスリやトンビのように旋回する姿も見るが、林道からカメラを向けるとこちらの視界からすぐ逃れ、警戒心の強いのが分かる。また、林道を歩いていると、脇の立ち木からすっと飛び立ち、森の中を滑空して消えていくこともよくある。これは林道でエサを採るキジバトなどを待ち伏せしているのだろう。後に何度も鳥を食べた羽根がむしられた現場に出合い、それがオオタカの仕業だと分かったのだ。


この項、前項のミズキの後にしたが、日付からして前にすべきだったね。そのうち直します。
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